「布団が吹っ飛んだ」
「コーディネートはこーでねーと」
おやじギャグの典型として、時に失笑を買い、場の空気を凍らせることも少なくない「ダジャレ」。
そんなダジャレの能力とセンスを競おうというコンテスト「D-1だじゃれグランプリ東京」が東京・江戸川区で開催された。(2008年11月24日)
会場に到着すると、ダジャレを競技にするという、異色かつ斬新な試みを一目見ようと、多くの人々が詰めかけていた。
ルールは1対1のトーナメント制。毎回提示されるお題に従い、30秒の制限時間内にダジャレを創作。出場者が自ら発表し、3人の審査員によって評価される。
「我こそは」と名乗りを上げた出場者は、ざっと数十人。
小さな子どもからいい大人、女子高生や教師、新聞記者に外国人まで、文字通り老若男女、多士済々の顔ぶれだ。
いよいよ競技スタート。
お題が発表されると、場内の期待と緊張感が高まる。
短い制限時間内に脳みそをフル回転させ、よりハイレベルで気の利いたダジャレを生み出そうと懸命の出場者たち。彼らの気合いと緊張感が観客席にもひしひしと伝わってくる。
そして、ダジャレの発表タイム。
大会全体を通じて、いったいどんな素敵で大爆笑(?)のダジャレの数々が飛び出したのかは、ぜひ映像でご確認いただきたいのだが、勝敗を分けるポイントは、ダジャレの内容そのものはもちろん、プレゼンテーションやパフォーマンスの能力にもあるようだ。
見事にウケて、会場の拍手喝采を浴びる人。
「ややウケ」でお慰み気味の拍手の中、バツが悪そうに舞台を去る人。
日本語が不自由なはずなのに健闘を称えられる外国人などなど、
ウケてもウケなくても、彼らの奮闘ぶりを会場全体が温かい目で見守っている。
途中休憩をはさんで、いよいよ決勝。
出場者の緊張感もますます高まっているようだ。
激戦を勝ち抜いたのは果たして誰か。予想以上に感動的だった表彰式とあわせて、映像でたっぷりとお楽しみいただきたい。
記者個人としては、多くの出場者の中で、特に印象に残ったのが、決勝にまでコマを進めた20代の声楽家の女性だった。
一見すると品のいいお嬢様のようだが、日ごろからダジャレが大好きで、オリジナルの「ネタ帳」さえお持ちだという。
この大会が開催されると聞きつけ、「出るのは私しかいない」という熱い使命感に駆られての今回の出場。
ご本人いわく、本番前の緊張感と競技中のプレッシャーは並大抵ではなかったという。
戦いを終えた後の大粒の涙は、出場した人間にしか知りえない緊張感と、やり遂げた達成感の大きさを物語っている。
彼女は「来年も絶対参加します!」と、涙声ながらも力強く語ってくれた。
世知辛さが増す一方の時代に、ダジャレの持つどこか平和で牧歌的な魅力と、心地よい脱力感(笑)にひたることができた今回の「Dー1グランプリ」。
くだらないことを、あえて、堂々と言う。
言われた側もあたたかく受け止める。
その瞬間、誰もが自分のことだけで精一杯な今という時代の空気がゆるむ。
ダジャレは地球を救う!
とまでは言わないまでも、そんな少しの心の余裕の大切さに改めて気付かせてくれた、ちょっと素敵なイベントだった。
我こそはと思う方は、ぜひ次回の参加を検討されてはいかがだろうか。
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