こんにちは野龍です。今回は微生物の話です。
みなさんは微生物と聞いて何を思い浮かべますか?
生物を研究されている専門家の方などでなければ、多くの人は小学校中学校の理科の授業で顕微鏡を通して見た小さな生き物たちを思いだすことでしょう。
透明なガラス板(プレパラート)の上でうごめいていた、ミジンコ、ゾウリムシ、クチビルケイソウ、ミドリムシ...
濁った水の中に実にさまざまな微生物がいることを知り驚いた経験がある方も少なくないでしょう。
さて、この微生物、小さいからといって、その力も小さいわけではありません。
みなさんは微生物と聞いて何を思い浮かべますか?
生物を研究されている専門家の方などでなければ、多くの人は小学校中学校の理科の授業で顕微鏡を通して見た小さな生き物たちを思いだすことでしょう。
透明なガラス板(プレパラート)の上でうごめいていた、ミジンコ、ゾウリムシ、クチビルケイソウ、ミドリムシ...
濁った水の中に実にさまざまな微生物がいることを知り驚いた経験がある方も少なくないでしょう。
さて、この微生物、小さいからといって、その力も小さいわけではありません。
微生物には、微生物だからこそできることもあります。
繁殖・分裂能力、生命力、分解能力など、それぞれの微生物はそれぞれの特異な能力をもち繁栄してきました。
現在、さまざまな問題が世界中で起こっています。
とくに、人口増加による食料不足、石油枯渇による燃料不足などは私たちの未来の生活を大きく左右しかねない事柄です。
迫りくるこうした危機に対処するために、微生物の特性を活かすことはできないだろうかと、さまざまな方法で微生物の研究開発がおこなわれています。
発酵食 品や、抗生物質などの薬品の生産、肥料の生産、廃水や廃棄物の分解処理など、その活用は多岐にわたります。大小さまざまな企業が、微生物の利用可能性を追求しています。
今回取材したのは、こうした微生物の限りない可能性を追い求めるベンチャー企業、株式会社ユーグレナ(東京都文京区)です。事業戦略本部・浅岡さんにお話を伺いました。
(株)ユーグレナが研究しているのは、みなさんもご存じ、「ミドリムシ」。
では、このミドリムシを一体どんな目的に使っているのでしょうか。
ミドリムシといえば、長い毛(べん毛)が一本生えていて、
プレパラートの上を自在に動き回り、体内にある葉緑素で光合成もすることから、
小学校のテストにおいても恰好の出題ネタとなっています。
自在に動き回るという動物的な性質をもつ一方で、光合成をすることから植物の性質ももつという特殊な存在です。
つまり動物でも植物でもなく、分類するならば、藻類となります。
そう、名前と違い、ムシ(昆虫)ではないのです。
ミドリムシという名前は和名で、学名では「ユーグレナ」といいます。
17世紀に初めてこれを発見したオランダの博士が、その体内の美しい眼のような部分を見つけ、ラテン語で美しい(eu)眼(glena)と名付けました。
拡大写真を良く見てみると、緑色の体内に赤くひかる眼のような部分を見つけることができます。実際にはこれは眼というよりは光の感知を助ける役割を果たす部分であるとのこと。
以下、この生物をユーグレナと呼ぶことにしましょう。
ユーグレナには素晴らしい性質が備わっています。
光合成によってユーグレナの体内に生成される栄養素は、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸など合わせて59種類にものぼります。
こうした栄養素は、人間が健康に生きていく上で必要なものである一方、すべてを効率よく摂取するのはなかなか難しいものです。
しかし、ユーグレナはこれらの貴重な栄養素を生成してくれるのです。
しかも、必要なものは、水と太陽光と二酸化炭素といったごくありふれたもの。
つまり、ユーグレナを増やしていけば、必要な栄養素を生産できるのです。
これを利用しない手はありません。
早くからこれに目をつけ、2005年、ユーグレナの研究開発を行うベンチャー企業として、そのものずばりの社名で起業したのが(株)ユーグレナ。
同年末には、天敵となる他の微生物を増やすことなくユーグレナだけを培養する技術を開発し、食品向けの大量培養に世界で初めて成功しました。
繁殖・分裂能力、生命力、分解能力など、それぞれの微生物はそれぞれの特異な能力をもち繁栄してきました。
現在、さまざまな問題が世界中で起こっています。
とくに、人口増加による食料不足、石油枯渇による燃料不足などは私たちの未来の生活を大きく左右しかねない事柄です。
迫りくるこうした危機に対処するために、微生物の特性を活かすことはできないだろうかと、さまざまな方法で微生物の研究開発がおこなわれています。
発酵食 品や、抗生物質などの薬品の生産、肥料の生産、廃水や廃棄物の分解処理など、その活用は多岐にわたります。大小さまざまな企業が、微生物の利用可能性を追求しています。
今回取材したのは、こうした微生物の限りない可能性を追い求めるベンチャー企業、株式会社ユーグレナ(東京都文京区)です。事業戦略本部・浅岡さんにお話を伺いました。
(株)ユーグレナが研究しているのは、みなさんもご存じ、「ミドリムシ」。
では、このミドリムシを一体どんな目的に使っているのでしょうか。
ミドリムシといえば、長い毛(べん毛)が一本生えていて、
プレパラートの上を自在に動き回り、体内にある葉緑素で光合成もすることから、
小学校のテストにおいても恰好の出題ネタとなっています。
自在に動き回るという動物的な性質をもつ一方で、光合成をすることから植物の性質ももつという特殊な存在です。
つまり動物でも植物でもなく、分類するならば、藻類となります。
そう、名前と違い、ムシ(昆虫)ではないのです。
ミドリムシという名前は和名で、学名では「ユーグレナ」といいます。
17世紀に初めてこれを発見したオランダの博士が、その体内の美しい眼のような部分を見つけ、ラテン語で美しい(eu)眼(glena)と名付けました。
拡大写真を良く見てみると、緑色の体内に赤くひかる眼のような部分を見つけることができます。実際にはこれは眼というよりは光の感知を助ける役割を果たす部分であるとのこと。
以下、この生物をユーグレナと呼ぶことにしましょう。
ユーグレナには素晴らしい性質が備わっています。
光合成によってユーグレナの体内に生成される栄養素は、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸など合わせて59種類にものぼります。
こうした栄養素は、人間が健康に生きていく上で必要なものである一方、すべてを効率よく摂取するのはなかなか難しいものです。
しかし、ユーグレナはこれらの貴重な栄養素を生成してくれるのです。
しかも、必要なものは、水と太陽光と二酸化炭素といったごくありふれたもの。
つまり、ユーグレナを増やしていけば、必要な栄養素を生産できるのです。
これを利用しない手はありません。
早くからこれに目をつけ、2005年、ユーグレナの研究開発を行うベンチャー企業として、そのものずばりの社名で起業したのが(株)ユーグレナ。
同年末には、天敵となる他の微生物を増やすことなくユーグレナだけを培養する技術を開発し、食品向けの大量培養に世界で初めて成功しました。
新たな時代を切り開く企業として、マイクロソフト日本法人・元社長の成毛真氏といった方々からも出資を受け、現在では、太陽
光・水・気温などの条件が理想に近い、沖縄・石垣島での大量培養が行われています。
ベンチャー企業としての設立を支援したのは、近年「産学連携」を推し進める東京大学。
またユーグレナの豊富な成分は、タブレットやカプセルといった機能性食品や、化粧水・クリームなど化粧品としての活用も進められています。
ユーグレナは、このように加工品として利用できる一方、温暖化ガスの削減に大きく寄与するという面もあります。光合成のために二酸化炭素を吸収するため、例えば二酸化炭素が多く排出される火力発電所や工場などの排出口にユーグレナの培養タンクを設置しておけば、排気ガスに含まれる二酸化炭素を削減できるといわれています。
しかも、その吸収・生産効率は熱帯雨林の十数倍とも言われており、地球温暖化を食い止める一つの手段となる可能性を秘めているのです。工場の排出口で高濃度の二酸化炭素を吸収しながらグングン成長していくユーグレナたちが頼もしくさえあります。
このようにユーグレナは、食料問題・燃料問題・地球温暖化といった世界規模の問題から人類を救うかもしれない救世主として注目されており、その実用化に向けた歩みが日々進められているのです。
今後さらに研究・開発が進めば、生活の様々な場面でユーグレナが活用されるようになるかもしれません。
取材に伺った東京大学構内の研究本部には、見本として小さめの培養タンクが備え付けられていました。高さ60cmほどの水槽のなかにぎっしりとユーグレナが培養されていました。条件さえ整えば微生物として分裂繁殖を繰り返すため、その個体数は莫大なものになります。実際の培養場では、試験管から屋外の巨大タンクまで、段階に合わせて培養方法を変化させ、最も効率の良い培養が追求されています。
さて、現在ユーグレナ商品として話題性が高いのが、ユーグレナの粉末を生地に練り込み、栄養豊富でしかも低カロリーという「ミドリムシクッキー」です。
この製品は、2009年11月に日本科学未来館(東京・台場)で行われた企画展「'おいしく、食べる'の科学展」の展示ブースにおいて発表され、ミドリムシがクッキーに入っているという目新しさと、微生物に豊富な栄養がつまっているという驚きから好評を博し話題を集めました。その結果、当初出展用として開発された「ミドリムシクッキー」は常時販売されることになり、現在も通信販売や日本科学未来館の販売スペースで買うことができます。
さて、このクッキーの味が気になるところ。
いくら栄養たっぷりで低カロリーなクッキーといっても、いままで食べ物とも思っていなかったミドリムシを食べるということを、一般の方々はどのように感じていらっしゃるのでしょうか。
というわけで実際に、ミドリムシクッキーを見たことのない方に試食をしていただこうと、東京・お台場の日本科学未来館に足を運びました。
1階の販売スペースのコーナーに、大きな棚の6段全部を埋め尽くす「ミドリムシクッキー」を発見しました。黄色い箱に緑色で描かれた表紙のミドリムシがずらりと並ぶ様子はインパクト大です。
発売してからずっと売れ行きは好調だそうで、各メディアで報じられることでさらに人気が持続しているようです。
と、クッキーに興味を示している女性2人組を発見。
やはりミドリムシという名前と、それが食べ物になっているという事実に驚きを示していましたが、「おみやげにいいんじゃない?」ということで1箱ずつ購入。
外に出てインタビューをさせていただきました。
感想を伺ったところ、最初は「え、ミドリムシって!?」と驚いたものの、パッケージの説明文を見ていかに栄養豊富かということを知り、おみやげも兼ねて購入したとのことでした。
小さなクッキー1枚の中にはじつに2億匹ものユーグレナが含まれています。
クッキーを観察してみたところ、ユーグレナの粒は眼に見えないくらい小さく、色合いはほのかに緑色がかっています。
味わいは普通のクッキーより少しだけ薄味で、しっとりとしている感じ。全体的な印象としては、言われなければ普通のクッキーにしか思えないとのことでした。
続いて、お子様と一緒に来られた女性2人に感想を伺いました。
こちらはミドリムシクッキーの存在をご存じないため、パッケージを見せると「何これ!!」と少しだけ拒絶反応ともとれる反応をされました。
「虫入りのクッキー、食べる?」と、怪訝な表情でお互いに顔を見合わせていました。やはり「ミドリムシ」という名前があると、虫を想像してしまい、抵抗を感じる方もいるようです。虫ではないのですが...
試食を断られてしまうかと思いきや、娘さん(小学校3年生)が自ら興味をもって「食べる!」と言ってくれました。微生物というのがまだよく分かっていない年頃のほうが抵抗はないのでしょうか、ミドリムシがどんなものか気にせずに食べてくれました。食べた途端「おいしい!」と元気なコメント。それを見て周りの皆さんも安心できたのか、全員に試食していただけました。
最初にイメージしたものと、食べたものとのギャップに感心なさっていました。
やはり、ネーミングと実際とのギャップが大きく、実に普通のクッキーだということが分かってからはこのクッキーがどのような効果をもつものなのか興味を持っていただけました。
栄養豊富であること、ミドリムシはムシではなく、ユーグレナという名前で様々な目的に用いられていることなどを説明し、非常に関心をもっていただけたようです。
試食の様子を見る限り、ユーグレナ入りの食品に対する「警戒」を解くためには、まず当該食品を「試食」してもらい、いかに普通かを実感してもらうことが重要なのではないかと感じました。一度食べてしまえば抵抗感も薄れることでしょう。
ところで、ここまで様々な可能性を紹介してきたユーグレナですが、課題や問題はないのでしょうか。
浅岡さんにお尋ねしたところ、現在の最大のネックは生産コストであるとのこと。現在、技術の向上により大量培養のコストは低下しつつあるものの、依然としてユーグレナ商品の価格はまだ安いとはいえない状態です。ミドリムシクッキーも5枚で450円。日常のおやつとするには少々高価かもしれません。
今後ユーグレナ商品がさらなる普及をし、(株)ユーグレナの一つの目標である食糧難国家での栄養供給を実現するためには、いっそうのコストダウンが必要となってくると、浅岡さんはこれからの課題を挙げます。
世界の食糧、飼料、燃料などの分野においてユーグレナは様々な可能性を秘めています。
ベンチャー企業としての設立を支援したのは、近年「産学連携」を推し進める東京大学。
東京大学では、近年、大学のもつ知の財産を実際的な形で社会に還元しようというポリシーのもと「産学連携」が実現しており、その支援体制のもとでさまざまなベンチャー企業の設立が進められてきました。
(株)ユーグレナもその一つ。現在では、大学発ベンチャー支援のために東京大学構内に設けられた施設「アントレプレナープラザ」内に研究本部がおかれています。
大量培養が可能になれば、さまざまな分野でユーグレナが活躍する機会が増えていきます。
まず食料としては、人間が必要とする栄養素のほぼ全てを生産できることから、食糧問題の解決が図れる可能性があります。食糧生産の追い付かない国であっても、二酸化炭素と水と太陽光を効率よく活用すればユーグレナを培養できるため、食糧難の解決に役立てられるかもしれません。
また、家畜や養殖魚を育てるための飼料としても非常に期待されており、とくに養殖魚の稚魚の致死率を低下させる飼料として注目を集めています。
次に、燃料としての活用があります。ユーグレナからとれる油分をバイオ燃料に加工・精製するのです。バイオ燃料とは、植物から取れる油やアルコールを使用する燃料で、燃焼によって排出される二酸化炭素は元来植物が取り込んだものであるため、大気中の二酸化炭素を増やしにくい燃料として注目されています。
(株)ユーグレナもその一つ。現在では、大学発ベンチャー支援のために東京大学構内に設けられた施設「アントレプレナープラザ」内に研究本部がおかれています。
大量培養が可能になれば、さまざまな分野でユーグレナが活躍する機会が増えていきます。
まず食料としては、人間が必要とする栄養素のほぼ全てを生産できることから、食糧問題の解決が図れる可能性があります。食糧生産の追い付かない国であっても、二酸化炭素と水と太陽光を効率よく活用すればユーグレナを培養できるため、食糧難の解決に役立てられるかもしれません。
また、家畜や養殖魚を育てるための飼料としても非常に期待されており、とくに養殖魚の稚魚の致死率を低下させる飼料として注目を集めています。
次に、燃料としての活用があります。ユーグレナからとれる油分をバイオ燃料に加工・精製するのです。バイオ燃料とは、植物から取れる油やアルコールを使用する燃料で、燃焼によって排出される二酸化炭素は元来植物が取り込んだものであるため、大気中の二酸化炭素を増やしにくい燃料として注目されています。
しかし、サトウキビやトウモロコシなど、もともと食糧だったものから生産するため、食糧価格の高騰を招き、生産地の人々の生活を圧迫するという問題が早くから指摘されており、バイオ燃料生産への反対運動も起こっていました。
ここで藻類であるユーグレナが活躍します。食糧と異なり、培養に際して比較的小さい面積で済むため、地域に与える影響が少なくなるのです。
ユーグレナがバ イオ燃料の新たな主役となれば、これまでのバイオ燃料と切り離せなかった問題の解決につながるかもしれません。
ここで藻類であるユーグレナが活躍します。食糧と異なり、培養に際して比較的小さい面積で済むため、地域に与える影響が少なくなるのです。
ユーグレナがバ イオ燃料の新たな主役となれば、これまでのバイオ燃料と切り離せなかった問題の解決につながるかもしれません。
最近の新聞紙上(日本経済新聞ほか)でも、ユーグレナ社が新日本石油とバイオ燃料の共同開発を始めたことが取り上げられています。
大量培養技術をもつユーグレナ社が、燃料としての量産技術をもつ新日本石油と組んで、5年以内に量産体制の確立を目指しているとのこと。
すでに航空機やバスを動かす実験も始めているそうです。
食物を原料に使う通常のバイオ燃料とは異なり、ユーグレナは農地を転化することなく効率的な生産を始めることが可能だと伝えています。
またユーグレナの豊富な成分は、タブレットやカプセルといった機能性食品や、化粧水・クリームなど化粧品としての活用も進められています。
ユーグレナは、このように加工品として利用できる一方、温暖化ガスの削減に大きく寄与するという面もあります。光合成のために二酸化炭素を吸収するため、例えば二酸化炭素が多く排出される火力発電所や工場などの排出口にユーグレナの培養タンクを設置しておけば、排気ガスに含まれる二酸化炭素を削減できるといわれています。
しかも、その吸収・生産効率は熱帯雨林の十数倍とも言われており、地球温暖化を食い止める一つの手段となる可能性を秘めているのです。工場の排出口で高濃度の二酸化炭素を吸収しながらグングン成長していくユーグレナたちが頼もしくさえあります。
このようにユーグレナは、食料問題・燃料問題・地球温暖化といった世界規模の問題から人類を救うかもしれない救世主として注目されており、その実用化に向けた歩みが日々進められているのです。
今後さらに研究・開発が進めば、生活の様々な場面でユーグレナが活用されるようになるかもしれません。
取材に伺った東京大学構内の研究本部には、見本として小さめの培養タンクが備え付けられていました。高さ60cmほどの水槽のなかにぎっしりとユーグレナが培養されていました。条件さえ整えば微生物として分裂繁殖を繰り返すため、その個体数は莫大なものになります。実際の培養場では、試験管から屋外の巨大タンクまで、段階に合わせて培養方法を変化させ、最も効率の良い培養が追求されています。
さて、現在ユーグレナ商品として話題性が高いのが、ユーグレナの粉末を生地に練り込み、栄養豊富でしかも低カロリーという「ミドリムシクッキー」です。
この製品は、2009年11月に日本科学未来館(東京・台場)で行われた企画展「'おいしく、食べる'の科学展」の展示ブースにおいて発表され、ミドリムシがクッキーに入っているという目新しさと、微生物に豊富な栄養がつまっているという驚きから好評を博し話題を集めました。その結果、当初出展用として開発された「ミドリムシクッキー」は常時販売されることになり、現在も通信販売や日本科学未来館の販売スペースで買うことができます。
さて、このクッキーの味が気になるところ。
いくら栄養たっぷりで低カロリーなクッキーといっても、いままで食べ物とも思っていなかったミドリムシを食べるということを、一般の方々はどのように感じていらっしゃるのでしょうか。
というわけで実際に、ミドリムシクッキーを見たことのない方に試食をしていただこうと、東京・お台場の日本科学未来館に足を運びました。
1階の販売スペースのコーナーに、大きな棚の6段全部を埋め尽くす「ミドリムシクッキー」を発見しました。黄色い箱に緑色で描かれた表紙のミドリムシがずらりと並ぶ様子はインパクト大です。
発売してからずっと売れ行きは好調だそうで、各メディアで報じられることでさらに人気が持続しているようです。
と、クッキーに興味を示している女性2人組を発見。
やはりミドリムシという名前と、それが食べ物になっているという事実に驚きを示していましたが、「おみやげにいいんじゃない?」ということで1箱ずつ購入。
外に出てインタビューをさせていただきました。
感想を伺ったところ、最初は「え、ミドリムシって!?」と驚いたものの、パッケージの説明文を見ていかに栄養豊富かということを知り、おみやげも兼ねて購入したとのことでした。
小さなクッキー1枚の中にはじつに2億匹ものユーグレナが含まれています。
クッキーを観察してみたところ、ユーグレナの粒は眼に見えないくらい小さく、色合いはほのかに緑色がかっています。
味わいは普通のクッキーより少しだけ薄味で、しっとりとしている感じ。全体的な印象としては、言われなければ普通のクッキーにしか思えないとのことでした。
続いて、お子様と一緒に来られた女性2人に感想を伺いました。
こちらはミドリムシクッキーの存在をご存じないため、パッケージを見せると「何これ!!」と少しだけ拒絶反応ともとれる反応をされました。
「虫入りのクッキー、食べる?」と、怪訝な表情でお互いに顔を見合わせていました。やはり「ミドリムシ」という名前があると、虫を想像してしまい、抵抗を感じる方もいるようです。虫ではないのですが...
試食を断られてしまうかと思いきや、娘さん(小学校3年生)が自ら興味をもって「食べる!」と言ってくれました。微生物というのがまだよく分かっていない年頃のほうが抵抗はないのでしょうか、ミドリムシがどんなものか気にせずに食べてくれました。食べた途端「おいしい!」と元気なコメント。それを見て周りの皆さんも安心できたのか、全員に試食していただけました。
最初にイメージしたものと、食べたものとのギャップに感心なさっていました。
やはり、ネーミングと実際とのギャップが大きく、実に普通のクッキーだということが分かってからはこのクッキーがどのような効果をもつものなのか興味を持っていただけました。
栄養豊富であること、ミドリムシはムシではなく、ユーグレナという名前で様々な目的に用いられていることなどを説明し、非常に関心をもっていただけたようです。
試食の様子を見る限り、ユーグレナ入りの食品に対する「警戒」を解くためには、まず当該食品を「試食」してもらい、いかに普通かを実感してもらうことが重要なのではないかと感じました。一度食べてしまえば抵抗感も薄れることでしょう。
ところで、ここまで様々な可能性を紹介してきたユーグレナですが、課題や問題はないのでしょうか。
浅岡さんにお尋ねしたところ、現在の最大のネックは生産コストであるとのこと。現在、技術の向上により大量培養のコストは低下しつつあるものの、依然としてユーグレナ商品の価格はまだ安いとはいえない状態です。ミドリムシクッキーも5枚で450円。日常のおやつとするには少々高価かもしれません。
今後ユーグレナ商品がさらなる普及をし、(株)ユーグレナの一つの目標である食糧難国家での栄養供給を実現するためには、いっそうのコストダウンが必要となってくると、浅岡さんはこれからの課題を挙げます。
世界の食糧、飼料、燃料などの分野においてユーグレナは様々な可能性を秘めています。
生活のあらゆるところにユーグレナが組み込まれ、それが当たり前になる社会が到来するかもしれません。
そんなスケールの大きな夢を、この目にみえない小さな微生物が握っているのです。
そんなスケールの大きな夢を、この目にみえない小さな微生物が握っているのです。
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