あなたも家に帰れない!? 『首都直下地震・帰宅訓練』

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 災害は忘れたころにやってくる。

阪神淡路大震災から早いもので10年以上が経過し、新潟の中越沖地震(2007年7月16日)など大きな地震の発生を経ても、どうにも東京の人々の災害への危機感は薄いように思える。

  かくいう都内在住の記者自身も、震災などに備えた準備や心構えはまったくできていないというのが実情だ。




  そんな折、記者の住む世田谷区のボランティア協会が首都直下地震を想定した「帰宅訓練」を実施すると聞きつけ、普段の準備不足の反省と取材を兼ねて参加させていただいた。(2008年12月6日)


  スタート地点は都心の人気スポット、六本木(港区)の「東京ミッドタウン」。およそ2時間の予定で、約5キロ先の三軒茶屋(世田谷区)を目指す。

  参加者は若者から高齢者まで男女あわせて20人前後。
週末の一日を災害体験に割こうというだけあって、参加者の皆さんはそれぞれに災害への意識が高いようだ。(中には、「友達に誘われて・・」という人もいましたが)

  いくつかのグループに分かれて、ミッドタウンをスタート。
わきあいあいとした雰囲気は避難訓練の緊迫感とは無縁だが、スタート直後、さっそく今回の訓練のポイントのひとつである「災害時帰宅ステーション」を発見した。


  「災害時帰宅ステーション」とは、災害時に職場や学校に取り残され、帰宅が困難になる「帰宅困難者」に飲料水やトイレ、情報などを提供するコンビニやガソリンスタンド、吉野家(牛丼)などの一部店舗のこと。映像でもご覧いただけるよう、黄色いステッカーが目印だ。

  大地震などで公共の交通網が遮断されると帰宅困難者が大量に出るとされ、首都直下地震では首都圏でおよそ650万人、都内だけでもおよそ390万人が帰宅困難になると予想されている。(政府の中央防災会議の想定。ちなみに大阪の場合でもおよそ200万人発生するという)

  帰宅困難者が一斉に自宅に向かった場合、道路は満員電車並みに混雑。歩行時間は通常の2倍から3倍になるとされ、けが人はもちろん、最悪の場合、死者もでると懸念されているのだ。

  火災や建物の倒壊に巻き込まれる恐れがあるほか、徒歩帰宅中のトイレの不足も問題視されているなど、帰宅困難者をめぐる問題は山積。

  そのため自治体などでは、安全の確保や家族の安否が確認できた人は、帰宅を翌日にずらすなどの対応を求めている。

  今回の帰宅訓練では、ざっくりとした感覚でおよそ20分ごとにコンビニの帰宅支援ステーションを発見することができたのだが、路上が帰宅困難者であふれかえったとしたら、各ステーションには人々が殺到する状況が容易に想像できる。

  数が限られ、人手も十分とは思えない帰宅支援ステーションで果たしてどれほどの対応をしていただけるのかとなると、非常に心もとない、というのが正直な感想だ。


         ・・・・・・・・・・・  〇  ・・・・・・・・・・・


  徒歩訓練の一行は、国道246号線に沿って、渋谷方向へと足を進める。

  246号線には首都高の高架があり、見上げるたびに、阪神大震災当時の横倒しになった高速道路を思い出してしまう。

  それでも、徒歩で帰宅する際には、こうした幹線道路を通行するのが良いとされている。建物の密集した細い路地は、火災や建物の倒壊などで通行が困難になったり、道に迷ったりする恐れもあるためだ。

  その他、震災時に徒歩で帰宅する際のポイントをいくつか映像の中でまとめたので、災害への心と物の準備の一助としていただければ幸いである。


       ・・・・・・・・・・・・  〇  ・・・・・・・・・・・・

 一行は渋谷を通過。

途中1人ご高齢の方が遅れたが、少し待っている間に元気に追いついた。その先は特に大きなトラブルもなく、無事ゴールの世田谷へとたどり着いた。

  今回は、歩道が混雑しているわけでもなく、天候にも恵まれたため、ちょっとしたハイキング感覚(?)で歩き通すことができたのだが、これが実際の災害時となると様相はまったく異なるだろう。

  表情をこわばらせ、我先にと一心不乱に自宅へと急ぐ人々。
都心を歩きながら、そんな「帰宅難民」の姿がありありと浮かんできた。

賑やかな都会の表情は、殺伐とした被災地のそれへと変貌し、あたり一面、地獄のような光景が広がる。もしもの時には、そんな状況も十分考えられるのだ。

今回、帰宅訓練に参加して、もっともよかったのは、そうしたリアルな「状況」を思い描くことができたことだった。

記者自身これまで、ニュースや新聞記事などで首都直下地震のことを見たり読んだりしても、見流し、読み流すだけで終わっていた。
ところが、実際に訓練に参加し、自らの体を動かすことによって、頭のなかにより現実的な「想像」や「想定」が立ち上がってきたのだ。

そんな体と頭のトレーニングが、災害への備えへの第一歩として非常に重要であることは、少なくとも今回参加したものの一人として自信を持って言える。

皆さんも一度、今回のような訓練に参加したり、自ら災害を想定して体と頭を動かしてみる、そんな体験をしてみてはいかがだろうか。

 

 

取材にご協力いただいた「世田谷ボランティア協会・梅ヶ丘ビューロー」の皆さん、参加者の皆さん、ありがとうございました。

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