皆様は『トリックアート』をご存じだろうか。
この言葉自体を聞いたことはなくても、多くの方がトリックアートの息吹に触れたことは恐らくあるのではないかと思われる。
トリックアートとは、あえて日本語に訳すなら、「だまし絵」だ。
例えば、だれもが一度は見たことがあるであろう、オランダの版画家M・Cエッシャー(1898ー1972)の描いた有名な『滝』。
画面上の水の流れに注目し、それをたどっていくと、なぜか上から下に落ちるはずの滝が再び上へと戻っていく。浮かび上がるのは現実にはあり得ない無限の水の循環だ。
あるいは、歌川国芳(江戸時代後期)の「寄せ絵」。
一見すると人間の顔だが、よく見ると無数の裸の男が寄り集まって鼻や額など顔面のすべてを形づくっている。
さらにいえば、幼い頃に親しんだ「間違い探し」や、目の錯覚を利用した手品なども、トリックアートの一種といってもよいと思われる。
今回、取材班が訪れたのは、東京・丸の内の「丸の内オアゾ」で行われた3Dトリックアートイベント。
世界が賞賛するトリックアートの第一人者(主催者資料より)、カート・ウェナー氏が、丸の内を舞台に不思議なびっくり空間を創造するというものだ。
このカート・ウェナー氏、イタリアで「最後の審判」をテーマにした作品を制作し、かのローマ法王、ヨハネ・パウロ2世にも認めらたという高名なアーティスト(だそう)。
もちろんご本人も会場に登場し、華麗な制作パフォーマンスとともに作品が公開されたのだが、そこにいかなる驚きの大空間が展開されたのかは、映像でじっくりとお確かめいただきたい。
かくいう記者も今回、本格的なトリックアートというのを初めて目の当たりにしたのだが、通常の絵画などとの最大の違いは、作品とともにその空間を共有し、ある種の"体験"をする感覚を味わえる点であろう。
見る者をわくわく、どきどきさせる力は、アートの枠を超えたエンターテインメント性やアトラクションの要素を多分に含んでいる。そこがトリックアートの最大の魅力といえそうだ。
アートにさほど詳しいわけではない記者だが、世界的にも歴史的にも高く評価されるアーティスト、例えばピカソやゴッホなどの作品は、見る者を作品の世界にぐっと引きこみ、わくわくどきどきさせ、ある種の"体験"をさせてくれる力を持っているように思える。
そう考えるとトリックアートとは、そんなアートの本質や魅力をより手軽に楽しませてくれる、初心者に優しい芸術の1ジャンルといえるのかもしれない。
日本ではまだまだ馴染みが薄いとされるトリックアートだが、そのエンターテインメント性から各地の観光地などを中心に小規模ながら専門のミュージアムも建設・運営されているようだ。
今回の映像を見て興味をお持ちになった方は、機会があればそんな魅惑のトリックアートを自分の目で見て、"体験"しに行ってみてはいかがだろうか。
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