にっぽんの夏の風物詩、花火大会。
全国各地で開催される花火大会の中でも、最も古い歴史を持つとされるのが、東京の隅田川花火大会。
花火大会数あれど、最も人気のある花火大会のひとつだろう。
江戸情緒が色濃く残る浅草や両国界隈が観覧スポットとなる隅田川花火。
往時は、「たまやー」「かぎやー」なんて掛け声とともに、風流な光景が繰り広げられていたのだろうが、現代の花火大会はそんな生易しいものではない。
今年(2009年7月25日)の人出は実に、98万4,000人。
不景気のせいで、安・近・短のレジャーが人気を集めている背景もあってか、去年より4万人も増えている。
会場に集まった人々だけで、政令指定都市が一個まかなえてしまうほどだ。
これだけの人間がひとつのエリアに集まるとどうなるか。
その一端を映像でご確認いただきたい。
かくいう記者自身も、都内在住ウン十年にして隅田川花火大会は初体験。
はりきって打ち上げ開始の数時間前に会場近くの浅草に到着したのだが、駅や浅草寺の周辺は浴衣姿の若い女性など、すでに多くの人でごった返していた。
一部エリアでは携帯電話も不通になるほどの大混雑ぶりだ。
いよいよ打ち上げ開始の時間が近づく。
隅田川花火初心者の記者は、もっともノーマルな観覧ポイントと思われる吾妻橋へと向かう。
吾妻橋は、雷門前の通りからつながり、対岸のアサヒビール本社を望む浅草のランドマーク。
この吾妻橋を挟んで上流と下流にある2つの会場から、芸と技の粋を尽くした花火が打ち上げられるのだ。
観覧順路の矢印に従って、橋へ向かって歩を進める。
しかし、橋に続く雷門通りは無数の人々で大渋滞。
まるで満員電車のようだ。
すでに打ち上げが始まっているにも関わらず、渋滞は動く気配すらみせない。
真夏の蒸し暑さに人々の熱気が加勢し、全身から汗が噴き出す。
「ボンッ!」「ボンッ!」
という音だけがむなしく響く。
林立するビルの向こうに隠れ、いっこうに姿を見せてくれない花火。
たまらずワンセグでテレビ中継を見る人の姿もちらほら見受けられた。
そんな中、吾妻橋入り口で警備をしている警察官のアナウンスが響く。
「私たち警察官は、この日のために何回も警備の練習を重ねてきましたー」
「警備にぜひご協力ください!みなさんならできるはずです!」
などと、警備を超えたマイクパフォーマンスともいえる口達者ぶり。
イライラの募る観客も、「はーい!」「イエーイ!」なんて、陽気な合いの手で応える。
さらにノってきた警察官。
「私、この隅田川花火大会の警備を何年もやってきましたが、人事異動のため、今年で最後になるかもしれません!」
と、悲しい(?)ご報告。
どうやらこうしてあの手この手で観客の注意をひきつけることが、スムースな警備に一役買っているようだ。
これも長年の経験から生み出された警備のコツなのであろう。
そうこしているうちに、渋滞は少しずつ前進し、記者も観覧ポイントの吾妻橋に近づく。
当初音しか聞こえなかった花火も、徐々にその美しい姿を現し始めた。
さっきまでの全身にまとわりつくような蒸し暑さも、川面から吹く風が心地よく洗い流してくれる。
いよいよ橋の上までやってきた。
眺めはまさに絶景。
日本一の花火の華やかさと迫力を映像でたっぷりとお楽しみいただきたい。
圧巻は、数千発の花火が上がるフィナーレの数分間。
それはもはや、「打ち上げ」というよりも、地面から直接かつ同時に放たれる無数の迫撃砲のよう。
まさに総毛立つほどのド迫力だった。
何から何まで初体験の隅田川花火大会だったが、混雑のつらさも含めて、結果的にさまざまな側面から楽しむことができた。
観覧後、のどに走らせた生ビールのおいしかったことは言うまでもない。
まだ足を運んだことがないという方、そして、苦しい混雑にも耐えてみたいという方、来年あたり、いろんな意味で'日本一'の花火観覧に出かけてみてはいかがだろうか。
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