近ごろ、ただお酒を飲んで話すだけではない、何らかのプラスワンの要素を加えた「○○バー」が人気だという。そこで今回は、都内のおもしろバー2軒(「ゴルフバー」と「鉄道バー」)を取材してきた。
まずは赤坂にあるゴルフバー「GRIP」。
このお店の特徴はなんといっても"ゴルフができること"。店内にはコンピュータ制御のゴルフブースが3つあり、本物のクラブとボールを使って実際にプレイすることができる。
目の前のスクリーンにはバーチャルリアリティ映像が映し出されるので、まるで本当にコースでゴルフをしているかのような感覚を味わえる。
週末にはゴルフブース用の座席は必ず埋まるほどの人気ぶり。
オーナーの藤田さんに「バーを経営していく上での苦労はなんですか?」と聞いたところ、「僕が働きすぎ----ってとこです」と返ってきた。大入りぶりが伺える。
ゴルフブースの壁には帽子がかけてある。「お客さん、よくかぶってますねぇ」と笑顔の藤田さん。特に、片山選手のトレードマークの白いカウボーイハットは気分を盛り上げてくれそうだ。「形から入る」のも重要だろう。
主な客層は30代、40代のサラリーマン。男性客が中心だ。しかし最近は、女性客も見かけられるようになってきたという。というのも、「ゴルコン」ということばを知っているだろうか?「ゴルフをしながら行う合コン」のことだ。最近は、GRIPで「ゴルコン」を行う若者達がたくさん居るそうだ。このゴルコンにより、女性客もちらほら訪れるようになったそうだ。
しかし、やはりメインの客筋は赤坂周辺で働くゴルフ好きなサラリーマンのお父さん達。藤田さんは、「この辺には練習場がないし、かと言って家に帰っても満足な練習ができる環境がない。週末にゴルフの予定があっても練習ができない人に需要があるんだと思います」と分析する。
また、「純粋にコミュニケーションの手段として」も、このゴルフバーは役に立っているという。実際、前述の「ゴルコン」中に会話が詰まっても、「とりあえず打つ」ことができるので、単に間が持つという以上に盛り上がることができる。藤田さんはそんな様子を、「傍から見ていて、"いい場所だなぁ..."と思っています」(笑)
さて、実際にプレイしてみた。
ポス・・・
まさにそんな音が聞こえてきそうな当たり。表示は3yd...
「左手を曲げず伸ばしたままにしておいて、頭を動かさずに打つといいですよ。そうすれば理論的にはまっすぐ飛びますから。」と、藤田さんからアドバイスをいただき、再チャレンジ。さっきよりは僅かに遠くへ飛び、約10ydを記録。
そしてグリーンまでは藤田さんに運んでいただき(笑)、パターに挑戦。
コン...ッ
「あ、右ですね。」コンッ...「あ、左ですね。」カップに向かって、まっすぐ転がらない。ここでもまた、「パターの面をボールに垂直に当てればまっすぐ進みますよ」とアドバイスをいただき再チャレンジ。すると3度目の正直でカップイン!
パターやボールはもちろん、見える視界がリアルなだけに、カップインするとすごく嬉しい!達成感もある。そして、「上級者のアドバイス通りに打ったらまっすぐ飛んだ」という所がこのバーの魅力を考える上で重要な点であると考える。つまり、このバーでプレーする人は、「努力すれば進化する/報われる」というスポーツの醍醐味を味わえるのだ。本物の道具を使い、実際に自分の体を動かしているのだから、充実感は大きい。
それにコンピュータはシビア。僅かなズレも感知する。だからより本物っぽくて面白い。
「本物のゴルフコースと練習場(打ちっぱなし)の中間を作ってみたかった」と藤田さん。ゴルフコースでは素人は遅延プレイを引き起こしたりマナーを知らなかったりで、とても楽しめないし、打ちっぱなしでは仲間同士でワイワイ楽しめない。そこで、このバーを作ることを「思いついた」のだそうだ。
そもそもゴルフとは、1ホール終わるたびにスコッチをグラス1杯飲んでいて、18ホール目で飲み終わったことから18ホール制になった...と藤田さんは教えてくれた。このバーでは1ホール毎か1打毎にもお酒を飲むことができる。ここは、ゴルフもお酒も同時に楽しむことのできる、まさに「伝統」を踏襲したお店だ。
数ある輸入ビールの中から今回いただいたのは、全英オープンも行われている「セント・アンドリュース」で販売されているビール。ゴルフの聖地をイメージしたものらしい。一般的な輸入ビールと違って、「なかなか普段は表に出ていない」貴重なビールとのこと。
とても飲みやすく、かるーい口当たり。マイルドな黒ビールといった感じ。こういうのを上品なビールと言うのだろう。
「手軽に本物のゴルフができる」 それがこのバーの魅力だ。
ゴルフバーは今回取材した赤坂以外にも、浜松町、東中野、六本木、横浜、名古屋など、様々な所に誕生している。この勢いで今後も増えていけば、"ゴルフバーからゴルフに入った"という、新たなゴルフプレーヤーの層も誕生してくるのかもしれない。
・・・・・・・・・・『鉄道バー』篇につづく・・・・・・・・・・・・
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